マーチ家の父 もうひとつの若草物語を読んだよ!

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マーチ家の父 もうひとつの若草物語を読了しました!
もっと早くにネタバレを若干含んだ感想文を書こうと思っていました。時間が経つと忘れちゃいますからね。

ネタバレ注意!ざっくり記事です。

※本書の紹介も含む記事となります

マーチ家の父 もうひとつの若草物語

まず断っておきます。この本は若草物語原作とは何の関係もありません。もちろん世界名作劇場の『愛の若草物語』とも関係はありません。オルコットが書いたものではりません。二次創作です。二次創作とは言え、若草物語の作者オルコットの父の日記等の参考資料をもとに造られた物語です。若草物語の家族構成も、作者オルコットの家族をモデルにしていますので、二次創作とは言え若草物語では語られなかったマーチ氏の姿があると言っても良いでしょう。そう思わせてくれる程の良作です。

感想から言いますと、終盤の意外な告白も含め…非常に楽しめました!

レビューに「若草物語のファンは怒るかもしれない」とありました。確かにファンにとっては、怒る部分もあろうかと思いますが、私は別の物語として読んでいましたのでわだかまりなく読めました。

私はこの物語に登場する人物の多くを好きになれず、好きと言ったら回想シーンに登場するベス、ジョー、メグでした。

好きなキャラは居ないけれど、物語は面白い。
私のレビューでは、キャラに対する批判的な内容が多いですが、この物語は本当に好きです。読ませる内容です。スムーズな翻訳ですし、翻訳文独特の気だるさや読みにくさはほとんどありません。「批判が多い=つまらない」作品ではありませんからね。

時代背景

アメリカ南北戦争の真っ只中。
アニメ愛の若草物語のマーチ氏は牧師ではなくれっきとした軍人の大尉として、戦場で闘っていました。原作では従軍牧師であり本編「マーチ家の父」でも従軍牧師で階級は大尉です。
マーチ氏は超理想主義で、奴隷制度に大反対し、奴隷の解放のための運動に身を捧げることを決意。自分の正義をあくまで貫こうとする姿に…私は、正直全く共感しませんでした。マーチ氏の妻(マーミーという愛称で呼ばれている)に対しても考え方や行動様式に共感できず、むしろ嫌になりました。マーチ氏、マーミーを親に持った4姉妹がよくぞあそこまで常識的にまっすぐ育ったなぁと感心しました。理想主義者の両親なので、彼女たちの鑑になろうという努力は感じられました。両親の良いところだけをしっかり学んだ優秀な4姉妹だと改めて感じましたね。

「共感できない」と書きまくってしまいましたが、物語そのものは非常に面白く、黒人女性のグレイスとの出会い、グレイスへの思い(恋愛めいた感情も持っていた)、戦闘での駆け引き、愛する家族への思い、マーミーのマーチ氏への疑惑などなど見どころがいっぱいです。

戦争なので残酷なシーンはありますし、黒人奴隷たちへのすさまじい虐待シーンもありますので、ご注意ください。当時のリアルな部分をかなり控えめに再現しています。実際に欧米列強がアメリカ大陸、オーストラリア、アジア等で行った原住民への仕打ち、大東亜戦争における日本兵への虐待、遺体への冒涜などはとても表現できませんが、この本の描写はそこまできつくはありません。

理想主義者マーチ氏

マーチ氏は隷解放のために尽力するものの、奴隷解放を叫ぶ北軍の多くは、黒人奴隷の解放をそれほど願っているわけでもありません。マーチ氏は友軍の元奴隷たちへの乱暴狼藉を咎めると、上司の大佐から逆に「兵士たちの役得」について説教されてしまうほどです。青臭いことばかりを並べ立てる40歳を超えた従軍牧師。超理想主義者で、宗教の道に反したことはしない。徹底した菜食主義者(菜食へのこだわりも、最近の過激なビーガン…とまでは行かないまでもそれに通ずるようなものを感じました)。黒人奴隷反対派の集会で述べた理想を、そのまま戦地に持ち込んでしまうものだから、どうしても浮いてしまう。戦地でどんなに飢えても肉は食べません。上官や兵士もものすごく気を遣うだろうな…。

マーチ氏の主な役割は、解放された黒人奴隷たちに文字を教えること。その他は死者の弔い、病人やけが人を慰めること、負傷兵の応急処置、雑役などです。

北軍と南軍が鍔迫り合いをしている地域にある綿花農場で、管理の手伝いと黒人教化をすることになったときのこと。北軍は戦略的にこの地域から僅かな兵を残して撤退。このままではこの農場も南軍の手に落ちると慌てふためく農場主でしたが、マーチ氏は極めて楽観的。あっさりと敵の手に落ちてからは、奴隷であろうと白人であろうと蹂躙されます。

マーチ氏は黒人奴隷とともに反抗をするものの、「敵は殺せない」と言って味方に大きな犠牲が出たり。仲間が捕まっているのを見逃せず、味方の黒人が「ここで出ては行けない。我慢のしどころだ」と言っているのに正面から飛び出して捕まってしまったり。助かっていたかもしれない命まで失ってしまった感が強く、読んでいてイライラしたシーンもありました。

不器用で情勢判断もいまいちなんですよね。マーチ氏。

妻マーチ夫人との再会

そんなこんなで生死をさまよう負傷を負ったものの、なんとか味方に助けられて、北軍の拠点にある野戦病院に収容されましたが、意識がほとんどない状態でした。

そこで、原作にもある場面と重なります。
マーチ氏が負傷したので、ジョーが髪の毛を売りマーチ夫人(マーミーと呼ぶ)とブルック氏が病院に駆けつける場面です。
野戦病院で再会を果たすも、マーチ氏の意識は朦朧。自分以外の女性と関係を持った形跡を見つけ出してしまい、マーミーは物語が終わる直前までずっと嫉妬し続けます。黒人女性と関係を持ったのではと疑い、疑惑の人物に詰め寄る様は…若草ファンなら見てられないシーンだと思います。

「あなた達は恋人同士だったのでしょう!?白状しなさい!」

「元奴隷が、私の苦境に哀れみを感じるなんて」

この台詞も黒人に対する根底的な差別意識を感じます。マーミーも当然奴隷制度に反対していましたし、多くの黒人奴隷を助けて来ましたが、やはり差別意識は潜在的なものと言って良い。彼女の思いを知った時、これが現実だよなと思わせてくれました。

嫉妬に狂いまくり、重症患者があふれかえる病院で夫の不貞を探る日々。周りの人間に聞きまくる様は、当時の状況を考えるとあまりに不自然な気がしました。確かに、白人女性は日本人と比べてはるかに嫉妬深い。ただ、当時は生きるか死ぬかという状況ですし、愛する夫が生きて帰ってきただけで嬉しいはずですし、素直に喜んで欲しかった。

いくらマーチ氏が聖職者と言っても、人間ですから、生きるか死ぬかの極限状態の中、一時の安寧を求めて女性と関係を持つのは、本能として仕方のない部分があるかもしれません。マーミーは夫を送り出す際、このようなことを一切想定していないほど純情だったのか…と。40近くになってあまりにも甘すぎやしないか?と思ってしまうのです。

もっと言いたいのは、マーチ氏は正義の塊。超理想主義者の聖職者です。そこらの兵士ならともかく、夫を長年信じ、戦地に行くことも賛成したのですから、どんなことがあろうと夫を信じて欲しかった。

マーミーは癇癪を起こすと暴力的になり、勢いよく捲し立てます。
そう…私達が小さい頃見た木曜洋画劇場、金曜ロードショー、土曜、日曜の夜に放送するアメリカ映画で、白人女性がパートナーに切れてまくしたてるシーン。これを思い出しました。

日本人女性だったらいきなり夫に噛みつかないと思うんですよね。まずは回復を待ってから、自分の気持を抑えつつ冷静に事情を聞く。相手の立場に立って考える人が多いと思います。マーミーは「私が私が!」ですからねぇ。夫の不貞を疑い、マーチ氏の体調が悪化した際も「いい気味だ」みたいなこと言っていましたからね…怖い。

ただ、作者のマーミーへの愛を感じます。彼女を描写する時の気迫が文章から伝わってきます。

原作通り、マーチ氏は家庭に戻っていくのですが、退院間近になっても「除隊はしない。まだ終わっていない。失われたものを取り戻すんだ!私には勇敢さが足りなかったんだ」と言い続けていました。結果的に自分の主義主張に重きを置いたために、仲間や黒人奴隷を死なせてしまいまいした。戦場に行ったらまた同じことの繰り返しか、戦死する可能性も非常に高い。現場でも白い目で見られていましたので、戦後の黒人奴隷の教化に邁進すればいいのにと思いました。

ベスの活躍

ベスが格好いいのですよ!逃亡してきた黒人奴隷を匿い、家宅捜索にやってきた警察官を追い返した時は興奮しましたね。

「捜査をするのなら令状をもってこい!!」

ベスVS複数の警官。

やっぱり強いよなぁ。芯の強さだったらジョーと互角…いや、それ以上だと感じさせてくれるエピソードでした。マーチ氏…自分が菜食だからって、娘たちにもそれをさせちゃあいかん。ベスにしっかり栄養をとらせてほしい。。。

「赤毛のアン」の二次創作「こんにちはアン」はアニメ化されているので、こちらもアニメ化を…と思いましたが、ちょっときついかな。

マーチ家の父 もうひとつの若草物語

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