キャラ崩壊、動画の魅力を損なうかもしれないので、いや!と、思ったら即ブラウザバッグを。
まずは動画を見てくれ!
第一ラウンド
「ナット、デミ、それから、サイラス。デーズィのことを頼んだわよ」
「「はい!」」
ナットとデミは、デーズィの母メグからデーズィをたくされ、元気よく返事をしたが、サイラスは笑顔でうなずいただけだった。
「ナット、ノリの良い曲をお願いね!」
「OK!デーズィ!任せてよ!」
エイミー叔母さんから暗器を使うよう勧められたが、それは断った。
勝負に勝つのに綺麗も汚いもない。それは確かであるが、これはトーナメント戦。ルールのある正々堂々とした闘いの場であり、デーズィにとっては忍としての流儀よりも、むしろ、武道家としての意地にこだわった。
「青コーナーよりデーズィ選手の入場です!世界名作劇場の中では、男子キャラが多く登場し男臭いのプラムフィールドにおいて、ナンが登場するまでは紅一点の生徒だったデーズィ。ナットの無実を信じ、ナットの間違いを優しく包こむ姿はまさに聖少女だ!放送終了後もその人気を保ち、いや、むしろ上がってきていると言ってよい!エイミー叔母さんから伝授してもらった忍術を武器にさっそうと登場!デーズィ・ブルック!」
「赤コーナー、小さいマリア選手の入場です!自分は決して『トラップ一家物語』の主役ではなかったが…世界名作劇場の病弱キャラたちからは憧れの的となっている。一体どうやって病気を治したのか?彼女が健康面での書籍を書いたら1000万部を超えるであろう、セミナーを開けば数秒でチケットが完売するであろう!死の谷から元気に生還した美少女、小さいマリア!」
「解説のチルトン先生、デーズィのセコンドに付いている御老体はどなたでしょうか?」
「彼はサイラスです。かつてアメリカの南北戦争で一騎当千の活躍をしたと言われている老兵士です。短期間とは言え、まさかサイラスがデーズィを鍛えたとは予想外でした。老兵は去っていなかった…」
両者ともにピンク色のコスチュームだが、燃え上がる炎の色は青。
一回戦ではレミ、二回戦ではトムを倒して来た相手。しかも、二人共作品の主人公を努めていたツワモノ…デーズィはより一層気を引き締めた。
「若草の遺伝子を継ぐ者と闘えて光栄ですが…、30秒でカタをつけて差し上げます…」
「気が合うわね!私もそのつもりよ!」
デーズィは小さいマリアの挑発に対して、即座に切り返す。
エイミー叔母さんが勧めてきた暗器を使用しての闘いには、微塵も興味がわかなかった。素手での勝利。サイラスはもちろん、祖父のフレデリックも南北戦争で指揮官として闘っていた。お祖父さんはジョー先生やベス叔母さんにも素手での闘い方を指南していたと言う。
忍術を学んでいる過程で、多くの武器を手にしてきたが…究極の忍者は徒手空拳になってこそ、最も真価を発揮できると言われている。
FIGHT!
デーズィは開始早々一気に距離を詰めた。突き、蹴りを浴びせていく。
「ほないくでえ!勝負や!」
デーズィ絶好調!
出会い頭に気の力で相手を上空に打ち上げたぁ!
白旗以外の武器は使いたくないっ!
起き上がった小さいマリアは即座に仕込み傘で2連撃。
デーズィも蹴りで打ち返すものの、小さいマリアの攻撃はデーズィにクリーンヒットしていく。仕込み傘はまるで居合抜きのような攻撃のため、見切るのが難しい。
短い白旗と蹴り技ではリーチが違うため、デーズィは追い込まれ始めていた。
斬撃だけではない。喧嘩キックも御見舞してくる。
「ぶっ!?」
まさか小さいマリアがど素人丸出しの蹴りを放ってくるとは思わず、左側から入っていくる右ハイキックを警戒していたので、もろに食らってしまった。鼻と顔は痛いけど…ハイキックのような脳へのダメージは大したことはなかった。しかし…これは、小さいマリアがあえて靴底をデーズィのきれいな顔にぶち当てるという…与えたいのはダメージではなく屈辱だった。
「デーズィの顔を泥だらけの靴で!ひどいっ!!」
ナットはそう叫ぶと凄まじい形相でバイオリンを激しく奏で始めた。先程の曲よりも更に激しい、闘争本能を掻き立てる音楽だ。
「小さいマリアに顔面を蹴られる屈辱の蹴り…ある意味ご褒美だっ!」
観客席に居たジャックはスタッフィやネッドが聞きとれないほどの小さな声で囁いた。
先程のケリでペースが更に食わされてしまい連続して攻撃を受けてしまう。
『こんなところで…負けないっ!』
デーズィの連携攻撃は防がれてはいたものの、竹林の壁へと小さいマリアを追い込んだ。気を練り相手の腹部へと叩き込む。これは防がれた。しかし、この気弾は二段構えだ。時間差で爆発する。マリアの体を少し浮かした程度で、この爆発によるダメージは皆無だった。
「こんな小細工で100年の歴史を持つ私をどうこうするなんて甘いわね」
「これで終わりじゃないのよ!」
爆炎に紛れて白旗で3連発を御見舞し、倒れたところを更に追撃。
「起き上がったところを…!」
「あまい!」
振り向きざま、渾身の仕込み傘の一撃。デーズィは沈んだ。世界名作劇場最大トーナメント Cブロック決勝 ベスVSラッシー
KO!!
第2ラウンド
「大丈夫よ!ナット。次こそは!99歳だか100歳だか知らないけど、若さで乗り切って見せる!」
元気を装っているが、手も足もでなかったのだろう。ショックも大きいはず。普段、デーズィの感情表現は素直だ。喜怒哀楽をそのまま見せて…魅せてくれる。一番好きなのは優しいところだけど、優しさを裏付ける素直さにハートを射止められていたのだ。
強がりを言うなんてデーズィらしくもない。もしかしたらこんな姿を見たのは初めてかもしれない。ナットはデーズィの鼻血を止めながら、デーズィの不安を受け止めていた。
「鼻血が止まらない…」
ナットが心配そうにつぶやいた。もしかしたら鼻の骨が折れているかもしれない。可哀想なデーズィ…。兄のデミを安心させるよう元気に振る舞っているが、息も荒い。それはそうだ。鼻血が出て呼吸がし辛いのだから。
ナットは椅子に座っているデーズィを背後から抱きしめた。
「な、何よ…ナット。どうしたの?」
「君なら絶対に勝てるよ。僕が付いているんだから。大好きだ、デーズィ」
「ありがとう、ナット」
頬を染め、鼻血がまた一筋垂れてきたけど、デーズィはお構いなしだった。
側にいたデミは恥ずかしそうにしながら、彼女の鼻血を拭った。
「ま、なんでも試して見るものじゃ。何事も勉強じゃからのう」
ゴングが鳴ったぁ!
仕込み傘での連携が厳しい!傘だと思っていたものが、凶器に変わる。刀の間合いが測りづらい。近距離からでも当ててくるため、デーズィは非常に闘いづらい。
一度攻撃を受けてから、蹴り技で押し返していく。
『まっすぐ突っ込んできた!』
抜き打ちにしてやろうと待ち構えていた。フェイントを入れてはくるものの、まだ若い。攻撃が直線的だと思い込んできた。
『消えた!?』
消えてはいなかった。前転するかと思ったら、両手を地について開脚蹴り。旋風脚のようにして2発がヒット!更に回し蹴りと後ろ回し蹴りが小さいマリアの顔面にヒット!
「いいぞ!デーズィ!!」
デミが叫ぶ。
闘いながら、白旗に気を込めていた。それを思い切り相手に叩きつける!
「見事です!デーズィ選手!仕込み傘の間合いを克服したかっ!?」
普段冷静な解説のチルトン先生も興奮気味だ。
「ふふ…詰めが甘いわね。だいぶ疲れているみたいだし。鼻血ダラダラで呼吸しづらいでしょ?」
約100歳の名劇ヒロインの老獪なテクニック。
仕込み傘で斬りつけ、突き飛ばし、倒れたら必ず一撃を叩き込む。倒れた相手に容赦のない一撃を浴びせ、確実にHPを削っていく。
「地味だが、手堅い…!」
今度は斬り上げられ宙を舞った。
倒れたところにダメ押しの一撃。
KO!!!
「勝者、小さいマリア!」
『完敗だった…』
大の字になって天を仰ぎ見ていると、小さいマリアが覗き込んできた。
「若草の継承者候補と言われるあなたと闘えて嬉しかったわ。あなたはまだまだ強くなる」
デーズィの瞳から悔し涙なのか、褒められ、報われたための嬉し涙なのか、涙が一滴こぼれた。
「齢100歳の…世界名作劇場のエルフ、フリーレンと言われるあなたに言われて光栄ですわ…」
「…あまり年齢のことばかり言わないでよ」
「大丈夫かー!?デーズィ!?」
ナット、デミが駆け寄ってきた。
「だ、大丈夫よ。ナット…」
「この会場のどこかでベス叔母さんがこの試合を見ていたはずだ。はっきり言って、ベス叔母さんの強さは半端じゃあない!僕のお祖父様、お祖母様よりも強いかもしれないんだ!必ずデーズィの敵を討ってくれる!あんたはおろか…トラップ一家全員を掃除しにな…準決勝は4日後、たった4日後だ…4日の間にせいぜい楽しんでおくんだな…」
妹が叩きのめされて怒り心頭のデミであった。ここまで怒った兄を見たことがない。
「やめて、デミ。これはちゃんとした試合なの。正々堂々と闘って私が負けただけじゃないの…マリアさんに酷いことを言うのはやめて」
可愛い妹が眼の前でボロボロにされてしまったのだから、怒るのも無理はない。
「あんたのお陰で、デーズィは更に強くなるじゃろう。私からもお礼を言うよ」
「ありがとう、デーズィ、サイラスさん。ベスさんとの闘い、楽しみにしております」
小さいマリアはそう言い残し、去っていった。
動画を視ようぜ!
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