世界名作劇場最大トーナメント 準決勝② エリザベス・マーチVS小さいマリア

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でも、動画は見ること!

「青コーナーより、小さいマリア選手の入場です!」

マ・リ・ア!マ・リ・ア!

「マリアコール!マリア選手大人気です!これまで倒して来たのはすべて強敵!1戦ごとにファン数を倍増させていく可憐な美少女小さいマリア選手です!小さいマリアもベスもかつては病弱少女でした。しかし、両者ともに病気を克服しただけでなく、血のにじむような修行を経てトーナメントに出場。出場どころか、準決勝までコマを進めた。しかも入場BGMは浜崎あゆみの「M(まりあ)」だぁ!」

“MARIA”愛すべき人がいて
傷を負った全ての者達…

“MARIA”誰も皆泣いている
“MARIA”だけど信じていたい
“MARIA”だから祈っているよ
これが最後の恋であるように

「この曲を選んだ真意はなんなんだ!?」

「おそらく、尊敬するマリア先生へ捧げる歌なのかもしれません。マリア先生、小さいマリア…そして、マリア先生を倒したアンジェレッタの声優さんも川村万梨阿さんでしたし」

解説のデラ(愛少女ポリアンナ物語)が、まるで小さいマリアの意図を察したように解説した。

『さすがデラさん。その通り』

セコンドにはマリア先生、ヘートヴィッヒも付いている。マリア先生がついてくれるなら百人力だ。

「赤コーナーより、エリザベス・マーチ選手の入場ですっ!」

更に大きな歓声が上がる。ベスの人気はうなぎのぼりだ。

「ベスぅぅあああああぁァァァ~!!!」

リングサイド席のダンテが大声で叫んでいる。

「まさかのお犬様退治を成功させた。清楚系美少女ベス!『強者の条件は鉄の胃袋』と語る食欲旺盛の超健康優良児。彼女が訪れた街は牛、豚、鶏が絶滅危惧種に追い込まれるという!心なしか、ほっぺが少しぽっちゃりしたようにも見えます!
これほどの美貌を持ちながら彼氏なし!現在お婿さん募集中!嫌いな物は生焼けのハンバーグと合コンに遅刻してくるタイプの男の子!世界名作劇場の広域指定暴食団、エリザベス・マーチが100年の歴史を屠るのか!」

ベスが入場時のお約束である投げキッスを観客席に向かって放つと、またしても失神者が続出。ファンの声援に笑顔で応える姿はまさに戦いの女神だった。

勝った!

両者が武舞台にあがった。

「ちょっとまってください!ベス選手の様子がおかしいです。数か所から血が流れていますし、だいぶ汗をかいていますよ!」

解説のデラが、まるでレフェリーに試合開始を止めるかのように発言した。
入場時は元気そうに笑顔を振りまいていたが、確かに服は汗と血で汚れている。

「へへへ…さっき着替えて来たんだけどね。シャワー入る時間がなかったのよ」

セコンドの母メアリー、父フレデリック、ローレンス翁は事情を知っているのだろう。ベスの姿を見ても全く動揺していなかった。

「あなた…そんな状態で私と闘うというの?ハンディ戦はゴメンだわ。馬鹿にしないで」

「くっくく…そうねぇ…大いにハンディ戦になると思う…あなたにとって」

「なにっ!?」

ベスは笑いを殺しながら応えた。汗をぐっしょりかいて疲れているように見えるが、精気は充実している。

「誰かとウオーミングアップでもしてきたのかしら…?ベスさんのあの姿は一体…?」

SRS席で観戦中のアンジェレッタは戸惑いながら、アルフレドの方を見た。
傷を負っているもののベスは涼し気な表情をしている。

「強いわね、小さいマリア100年の歴史。ぜえ~んぶ堪能させてもらったわよ!」

「わかったわ。その傷…私とほぼ同等の力量の持ち主と闘ったのでしょう?ジャッキー?アンネット?それともネロ?」

「久しぶりに…本気の自分に逢えた…。この勝負勝ったのは私よ!」

「ど、どういうことだぁ!?「勝つ!」ではなく「勝った」と過去形で勝利宣言っ!前代未聞です!」

ベスの発言に驚く実況。

「試合開始!!!」

先制をかける小さいマリア。スライディングから、仕込み傘での連撃。すべてがクリーンヒットした。

「さっきの台詞は、虚仮威しかっ!?」

ベスは傘で宙に打ち上げられたあと、地面に叩きつけられた。

「う~ん。効いたわぁ~!でも、やっぱりこれってハンディよね。ここまでリハーサル通りだと・・・」

ベスは立ち上がり、左腕の袖をまくり、小さいマリアに向かってかざした。すると、ベスの腕にカッターナイフで切られたような傷が浮かび上がった。

「な、なんだ…?かまいたちか?」

アルフレドが不思議そうにつぶやいた。

「思い込みの力だ」

「ト、トリックよ!」

小さいマリアはベスの発言をトリックの一言で片付けようとしたが、内心わかっていた・・・ベスならできるであろうと。

「私が病弱だった頃…お母様は不在。エイミーは学校、メグやジョーは仕事に行っていて…ハンナは家に居たけど家事で忙しかった。一人ぼっちだった頃、戦闘経験を積むにはどうしたらよいのだろうと考えていた。肉体的な鍛錬意外にも想像力を磨く必要があった」

「さっきからごちゃごちゃと…!」

結論をなかなか言わないベスに対して、小さいマリアは怒りを感じていた。ダメージの回復を図るための詭弁ではなさそうだ。出だしは良好だった。なのに…この不安はなんなのだ?

「思い込みの力よ…人間がリアルに思い描くことは…実現する!」

「突然、ベスが暴れ始めました!一体何事だぁ!?」

実況が思わず叫び、不気味に思った小さいマリアはバックステップで距離をとった。

「違う!ベスさんは架空の敵と闘っているのよ!」

SRS席のアンジェレッタが叫んだ。傍らのアルフレドも目を凝らしてベスの動きを追った。

「僕には…さっぱり…」

「あなたにも見えるはずよ。よく見てアルフレド。私にはわかる…ベスさんあなたの想像力は…こんな使い道があったなんて!」

「うん!見えるぞ!ベスのローキックが相手に当たった!」

ベス周辺の空気が歪んでいる。砂埃が舞い、架空の相手に投げ飛ばされ組み敷かれた。相手を投げ飛ばし、立ち上がると猛烈なラッシュをかけ、最後は双刃刀を横一文字に薙ぎ払った。

「見えた!今架空の相手が倒れたわ!ベスが勝った!」

解説のデラも叫んだ。ベスの動きについてこれたのは一部の観客とトーナメント選手だけであった。

「今のが『黒い兄弟』のマスタークラス。さしずめ、アウグスト君あたりね」
大きく息を吐いてから呼吸を整える。

アウグストさん

「『独闘』ね…ボクシングに代表される打撃系格闘技には無くてはならない稽古法の一つ…。自分だけでなく他人にまで視認させるとは…こんな高次元なものは初めて見たわ…」

自らの分身を創り出せるほどのアンジェレッタですら、ベスの想像力には驚きを隠せなかった。

「小さいマリアさん。あなたの一回戦、二回戦、ブロックの決勝戦をこの目に焼き付けた。攻撃パターンを予測して何度もリアルシャドーを行ったの。はっきり言って、この闘い勝った」

「ってことは…ベスの戦闘キャリアは数百回以上…?」

「否っ!何千試合だろう!!」

小さいマリアは、マリア先生の発言を即座に…苦々しげに否定した。

「はいぃ~!」

小さいマリアは仕込み傘で攻撃。防がれた。

ベスが双刃刀で反撃、1,2,3,4,5発!小さいマリアは立ち上がり打ち掛かるが防がれ、かわされる。

「吸収力もアップ!」

ウィスパーサイドガード的な商品のCMを放つほどの余裕ぶり。
致命傷になりかねない強力な一撃が小さいマリアの肩にめり込んだ。

「寝ちゃえば良いのに…」

「ベスの一撃により、小さいマリアの服が弾けとんだぁ!!これで二回目だぁ!」

上半身はブラ一枚のみ。全身には無数の傷跡。レミ戦依頼だ。この傷の由来は決して敵につけられたものではなく、修行中に負った傷である。

「小さいマリア100年の歴史…。立派なものよ。あなたも一人で鍛錬を積んできたのね」

話しながらも攻撃の手は休めない。

「私の顔がそんなに甘い?」

双刃刀を投げつけ、小さいマリアを切り刻む!一気に距離を詰めて藁人形のように斬撃を加える。

KO!!!

第二ラウンド

「勝負あったな」

父フレデリックが笑顔でベスに話しかけた。

「油断はできないわ。予習はバッチリだけど、小さいマリアもここまで勝ち抜いてきた猛者よ」

「うむ…真面目じゃのうベスは。見ている方は安心できるわい」

ローレンス翁もベスの闘いぶりに満足気だ。

「始めぇ!!!」

ラウンド開始直後、小さいマリアは打ち込めず、おずおずと下がるシーンが目立ったが仕掛けた。仕込み傘とケンカキックの連続攻撃。対デーズィ戦で見させてもらった。

「リハーサル通りだなぁ…おい…」

小さいマリアの攻撃をすべて予測できていた。
自分の攻撃がすべて当たる。小さいマリアが気の毒になってきた。

『ちょっと残念な感じがしてきたから、早くケリをつけてあげましょ』

一方的な展開。背中に何度も斬撃を受けてしまう。

「勝負あったか…?いや、もうやめさせた方がよいかもしれません」
名看護婦、ご指名ナンバーワンのデラはすでに小さいマリアの受傷状態を把握していた。

「切創46箇所、打撲傷15箇所、擦過傷10箇所…」

「まるで人間レントゲンっ!」

「動かないで…寝ちゃえば良いのに!!」

トドメの一撃!いや、連撃を浴びせ…小さいマリアが倒れた!

ベス、勝利!!!

動画を視ようぜ!

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