世界名作劇場最大トーナメント 決勝 完結!

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この記事はキャラ崩壊、無茶苦茶な作り話です。世界名作劇場のキャラが改変されるのが嫌いな人は、すぐにブラウザを閉じるか、ブラウザバックしてください。

でも、動画は見ること!

ベスは自陣に引き上げると、膝から崩れ落ちるように椅子に座った。
『呼吸が荒い…こんなに疲れるなんて、トーナメントに参加してから初めてよ』

ベスは辛うじて1ラウンドをものにした。実力は伯仲していた。あの時自分の傷を回復させていなかったら、「白魔法っぽい技」でKOされていたのは間違いない。戦術勝ちだ。あの選択肢は正しかった。兎にも角にも勝利する事ができたので良しとしよう。

父と母は応急処置に大忙しだ。
ローレンス翁と父はずっと私を鼓舞してくれる。相手のセーラも私と同じかそれ以上に消耗しているようだ。彼女の闘いぶりを見てきたが、ここまで彼女を追い込んだのは、私が初めてではないだろうか。

「惜しかったですよ!お嬢様!でも、あの調子で行けば次のラウンドはいただきです!」

ピーターが傷の手当をしながら笑顔で励ましてくれる。ベッキーがマウスピースを交換してくれた。

「セーラ、あんた…何をベスごときに手こずっているのよ!あんたならベスなんてちゃちゃっとやっつけられるでしょ!」

ラビニアの憎まれ口も心地よく感じるほど、セーラは疲弊していた。1ラウンド目でこれほどの打ち合いになるとは思わなかった。決定的な一撃を与えるのは至難の業だ。ベスは自他共に認める最強の名劇キャラなのかもしれない。

『元病弱キャラたちの勢いが凄まじい』

最大トーナメントで感じたのはこれだ。ペリーヌ、ポリアンナ、カトリ、フローネらの強豪が一回戦で姿を消したのは意外だったし、病弱キャラであった小さいマリア、アンジェレッタ、ベスは全員ベスト8以上の実力を持っている。

インターバルが終わり、2人は武舞台へと戻った。

第2ラウンド

「始めぇ!」

剣で戦うのであれば、2人の間合いはほぼ同じ。
セーラが遠間から槍で薙ぎ払ったが躱された。ベスは背中を見せるやいなや、双刃刀一閃。セーラの体を打ち上げた。起き上がりを狙うも、セーラがマジックソードの二刀流で鋭いコンビネーションをお返しする。続けてセーラが追撃、それをオーラ全開で弾き返すベス。

大ぶりの一撃をセーラに加える。防がれてしまったが、隙が生じた。細かく素早く双刃刀を切りつけていく。

「ベス叔母さ~ん!頑張って!!!」

SRS席のデーズィも声を張り上げて応援している。

「頑張ってよ…ベス!優勝したらみんなで世界一周旅行をするんだからっ!」

長女のメグも拳を固めて応援。

「ベス選手のラッシュが止まりません!まだまだ打ち込んでいく!」

『強いわね。さすがベス。防ぐのだけでも精一杯。このままではジリ貧ね』

「はあっ!」

セーラは気合とともにオーラで身を包み、その場で高速回転。扇風機の羽根のようになったオーラが、ベスの腹部を襲う。

「ぐうっ…」

ベスは思わずひざまずいてしまう。
苦しんでいる暇はなかった。矢継ぎ早にマジックソードが打ち込まれ、意識が飛びそうになる。今度は斧が!

『こんなの…まともに受けたら…』

ベスはすぐにガードを上げたが、ガードの上からでも十分に効いてしまった。

「まだまだぁ!」

「セーラ選手の攻撃は止まない!今度は剣、マジックシールドを叩きつけたぁ!これは効いているぞぉ!」

解説の「デビットガリック一座」の座長も多少の心得があるためか、彼女たち2人の動きになんとかついていけた。

シールドを叩きつけてから気弾をお見舞いする。

一気に劣勢に立たされてしまったベス、どう反撃するのか。

「しゃあっ!」

ベスは真下から突き上げるようなジャンピングハイキックを放つが、きっちりとガードされてしまった。

『腕が…痺れる』

なんて強烈なハイキックなのだろう。お父様のフレデリック譲りの蹴りね。
感心している場合ではない。すぐに斧を生み出しベスの腹めがけて叩きつける。

『もう打ち返してきた!』

ガードごと破壊しかねない地獄の斧。
続いてはお返しとばかりにベスの双刃刀がセーラのみぞおちに命中する。もう一度打ち据えようとしたが、リバースインパクトで弾き返される。セーラの反撃、今度はベスが弾く、ベスが打つ、セーラが弾く。互いに譲らない展開にSRS席のトーナメント選手たちは呼吸をするのも忘れていた。

セーラがベスの攻撃を弾き返した後、斧によるアッパーカットが炸裂した。

「お嬢様!ここです!ここしかないっ!」

ベッキーがひときわ大きな声を上げた。

宙に舞い上がり死に体となったところへ、マジックスピアの連続突きがベスに突き刺さった。

KO!!

父フレデリックが、慌ててダウンしたベスに駆け寄る。自力では立てないようだ。

「しっかりしろ!ベス!」

「うう…お父様…」

ベスを担いで自陣へ引き上げた。
椅子に座り水分補給、傷の手当を受けながら第2ラウンドを振り返った。
『やはり輝かしい戦績の数々と修羅場の数が違う。地獄を知っているダイヤモンドプリンセスの異名は伊達じゃないわ。流れに乗られたらあっという間にトドメを刺されてしまう。華奢だから力技で押し切れると思ったら、何度も弾かれてしまった。どうしたものかしらね…』

ベスは困り果てた顔で天を仰ぎ見ながら、大きなため息を付いた。

一方、セーラもベスの腕力には戸惑い気味であった。

「お嬢様、ベスさんには中長距離からの攻撃が有効ですね。槍や斧がよく当たっていますね」

確かにベッキーの言う通りではあるが、近距離戦で戦うと相手の力に呑まれそうになるのだ。
病弱だからと思っていたら、腕力、体幹、総合的な力がとんでもなく強い。彼女の実姉であるジョオと闘ったときも力強さを感じたが、明らかにベスの方が上だ。

「最終ラウンドもこの調子でベスをギャフンと言わせてよね!セーラのパワーだったら、力押しでいけるでしょ」

「ラビニア…彼女の力はものすごく強いわ。彼女の攻撃を何度か弾いたけど、全身の骨に響くすさまじい衝撃だった」

セーラにこう言われるとラビニアは黙ってしまった。準決勝終了後、廊下ですれ違ったベスに難癖をつけた時、顎を右手で掴まれそのまま持ち上げられたことを。顎を砕かれた幻覚を思い出した。まるで万力で締め付けられているような…人間離れした力だった。

「セーラお嬢様。安心して闘ってください。お嬢様にはこの不肖ピーターがついておりますから!」

「ありがとうピーター。そうね。あなたに手取り足取り教えてもらったんだもの。頑張るわ」

『手取り足取りだぁ…!?なに青春してるのよ…』

ラビニアが妬ましそうに2人を見つめた。ラビニアの思いは複雑だ。もちろんセーラには試合に勝ってほしいし、ベスをコテンパンにやっつけてほしいと思っている。しかし、セーラが程よくベスに苦しめられている姿も見たいと思っていた。

最終ラウンド

ベス応援団の声がひときわ大きくなった。数の上ではセーラを応援しているファンの方が、圧倒的に多いのだが、応援団長ダンテの声が響き渡った。

「ベスちゃあぁぁぁ~んんんっ!!頑張れ~!!」

『はっ!ダンテ君!!』

ベスが応援団長に向かって笑顔で手を振った。決勝戦、それも最終ラウンドで見せるような仕草ではない。

「ベス選手!なんと、この土壇場でファンサービスだぁ!いや、セーラ選手への挑発か!?」

実況の叫び声もすぐに応援団の声にかき消された。

「今の声援で、闘気が一回り大きくなったわね。ベスさん…」

「あなたこそ。彼氏をセコンドにつけて、羨ましいわ」

セーラから仕掛けた。開始直後に大技から繋いでいくつもりだった。ベスはそれをうまく躱したが、大技は囮だった。

「ぬんっ!」

斧を出現させ、ベスに先制の一撃を加えた。

苦痛に顔を歪めるベスであったが、これしきで怯むわけにはいかない。セーラすぐに高速の突きを繰り出してきた。その全ての槍を双刃刀で防ぎ切る。一撃でも当たってしまえば、すぐに主導権を握られてしまう。ぎりぎりの緊張感。反撃に転じようと思っていた矢先に再び斧が飛んできた。

『そう何度も喰らわないわよ!』

双刃刀でがっちりガード。腕が痺れ、体ものけぞってしまうほどの一撃だ。

『ものすごいパワーね、セーラ・クルー。あなたをお嬢様だと思わないことにしたわ。鬼神ね』

ベスの切り払いがヒット。決して重い打撃ではなかったが、ここから流れが変わった。次々と斬撃が入る。8発。

観客席からは大きな声援があがったが、SRS席のトーナメント参加者たちは沈黙した。ベスのまるで舞を舞っているような、古武道の型のような流れる動きに見惚れてしまっていた。

「き、綺麗だわ…」

セーラ陣営であるはずのラビニアでさえ、ベスを嫌っている彼女さえもが…称賛の声を漏らした。

「ぐぅ…」

このままダウンしてしまうかと思われたが、セーラはすぐに立ちあがった。
地面をなぞるように右腕、左腕を交互に突き上げた。セーラの拳が空振りしたかと思われた瞬間、地面からマジックソードが生えたかのように見えた。

死角から飛び込んできた刃をもろに喰らってしまった。ダメージは大したことはない。すぐに反撃に移ろうとした瞬間、セーラの体が迫ってきていた。ありえないほどの衝撃がベスを襲った。全身の骨がきしむ。

『まるで…鉱山用ダンプカーにぶち当てられたかのような…』

ベスが倒れ込んだところへ、セーラの空爆パンチが炸裂した。脊髄を破壊せんばかりの威力。ラスカルはトラウマだったのだろう、可哀想に震えていた。

「ベスぅ~~~!!」

応援団長のダンテが、ジョオが、メグが、エイミーが、そしてデーズィたちプラムフィールドの面々が叫び声を上げた。

ベスはなんとか起き上がり、再びセーラと乱打戦を繰り広げた。互いに撃ち合うも、しっかりとガード。一撃先に決めた方が、勝利を勝ち取ることができる。

「でええええぃ!!」

ベスの渾身の上段斬りを紙一重で躱す。

「セーラお嬢様!うまいっ!」

ピーターの激励。セーラはすぐさまマジックソードを叩きつけ、斧でダメ押しの一撃。

『さすがに、これでおしまいでしょう。ベスさんっ!?』

ベスは倒れなかった。それどころか、カウンターの斬撃を入れてきた。

『まだやるの!?』

ベスのタフさには驚くしかない。一撃で終わらなかった。1,2,3発。最後は向こうずねに刀を叩きつけられた。

「ううう…」

思わずしゃがみこんでしまったので、慌てて立ちあがったところ、ベスの左手が眼の前まで伸びてきていた。首をガッチリとロックされてしまった。

「セーラぁああああ!逃げて!振り切るのよ!」

ラビニアが必死で叫ぶ。セーラは慌てて左腕を掴んだが、遅かった。右肩から袈裟斬りに、今度は右の脇腹を斬られ、最後は左肩から袈裟斬り。

「ナイスファイトです…ベスさん」

傷だらけとなったセーラだったが、最後は笑顔でベスを見つめながら…倒れた。

「勝者、エリザベス・マーチぃぃぃぃ~!!!!」

「終わった…やっと…」

ベスは勝利のポーズをとり、観客へしっかりと挨拶をした。
観客は総立ち。両者には拍手と大歓声が送られた。

優勝したら

ベスはセーラに目をやると、大の字のまま仰向けで倒れている。酷く苦しそうだ。肩から腕から、全身から血が流れている。自分も立っているのがやっとであるが、セーラの方が重傷なのだろう。

「セーラ…」

ベスはセーラの側に腰を下ろし、髪をなでた。頭からも流血している。苦しそうに呻き声を上げていた。

『しようがないか…』

ベスは左手をセーラの胸に、右手を腹の上に乗せた。意識を集中するとセーラの体が淡い光に包まれた。セーラの体から出血が止まり、傷もわずかに塞がっていた。

「これで…だいぶ…楽になったでしょ?セーラ」

言うやいなやベスはその場に崩れ落ちてしまった。ちょうど、セーラの右腕が腕枕となり、二人は寝転びながら見つめ合う状態になった。

「ベス…あなた…私のために…。やっぱりマーチ家の娘さんはとっても優しいのね」

ベスのお陰で傷だけでなく気分もだいぶよくなった。なんとか喋ることができる。

セーラ、ベス、それぞれのセコンドたちが2人を取り囲んでいた。すぐに2人を引き上げさせようとしたが、ベスが彼らを制した。

「待って…もう少しセーラと話がしたいの…いや、お話が聞きたいの」

そう言われては、両親もローレンス翁も手出しができない。

「ちょっと行ってくる!」

アンネット、カトリはSRS席から飛び出し、セーラたちのいる武舞台へと走っていった。

「え!?アンネット!カトリ先輩まで!」

隣に居たアニタは驚いた。

アンジェレッタも飛び出した。世界名作劇場一のヒロインと言われるセーラと優勝したベスが何を話しているのか…聞かずにはいられなかった。

「おい…アンジェレッタ!」

アルフレドが制止する暇もなかった。

「おめでとう、ベス…悔いはないけど…私とっても優勝したかったのよ。『小公女セーラ』を有名にしたかった」

「優勝してもしなくても…あなたはとても有名じゃない…『愛の若草物語』よりも有名でしょ?」

「セ、セーラ…ベス、大丈夫?」

アンネットとカトリが心配そうに2人に声をかけた。2人の後ろには、トーナメントでは銀河の天使と言われたアンジェレッタが緊張した面持ちでセーラとベスを見つめている。

「私は世界名作劇場のトップに立ちたかった。今の時代でも再放送されるほど有名になりたかった。『今の時代にはそぐわない』とか『今の子供たちにはきつすぎる』『鬱アニメ』とか言われているけれど…作品としては素晴らしいのよ。世界名作劇場は」

『小公女セーラ』以上の鬱アニメと言われている『アルプス物語わたしのアンネット』の主役であるアンネットは、すでに涙ぐんでいた。カトリとアンジェレッタが、そっとアンネットの肩に手を添えた。

「今の子供たちにこそ見てほしい…私が…鬱アニメと言われている『小公女セーラ』が再放送されれば、後に続きやすいでしょう?『愛の若草物語』も『母をたずねて三千里』『南の虹のルーシー』だって…」

少し咳き込んだ後、セーラはアンジェレッタたち3人にも視線を向けた。

「来てくれたの…あなた達の作品も再放送されるはずよ。リメイクもいいけど、やっぱり再放送が一番よね」

「セーラ、あなたそこまで考えていたの…。人気作品だから他の…あまり人気のない作品のことなんて考えていると思わなかった」

ベスが言うと、カトリとアンネットは一瞬鋭い視線をベスに向けたが、全く気づかなかった。

「そうよ。今の子供たちこそ名作劇場を見てほしい。見るべきだと思うの。困難にぶち当たった時、私たちのことを思い出してほしい。できれば原作も手にとってほしい…」

「偉いわね…私は、第二若草物語をアニメ化してほしいとは思っていたけど、名劇全体のことは考えていなかった。それに、この大会で優勝したらみんなで世界一周旅行に行って、美味しいものを食べられればいいと思っていた」

「ふふふ…それもベスらしくて良いじゃない。私達の分まで楽しんできて」

両陣営のセコンド及びカトリ、アンネット、アンジェレッタらも皆涙していた。ダイヤモンド・プリンセスと言われる頂点に立っている人間なのに、こんな考えを持ちながら試合に出場していたなんて。

「私だって自分のことしか考えていなかった…。昔の名劇作品だし鬱アニメとか言われてグッズも振るわないし、カレンダーにはここしばらく載っていないし…それで、暮らしぶりがきつくてこのトーナメントに出たのよ。正直、人気作品のあなた達が羨ましかった。『人気キャラをギャフンと言わせよう』って思っていたし、人気作品にのし上がりたかった。お金だってほしかったのよ」

アンネットの正直な告白。ラビニアはいつぞやの会食の際、彼女に酷い口をきいてしまったのを思い出し、アンネットの肩を引き寄せた。
でも、誰もアンネットがわがままだと思わなかった。自分が出演している作品を有名にしたいと思うのは当然のこと。それに『アルプス物語わたしのアンネット』がカレンダーに載っていなかったり、グッズになっていなかったため、アンネットを心配する他作品のキャラたちも大勢いた。

「セーラの世界名作劇場への思いには…心打たれたわ。試合は私が勝ったけど、勝負には完全に負けた気がする」

ベスは言うなり気を失ってしまった。慌てて両親がベスを抱き起こした。

「眠ってる…」

父のフレデリックがつぶやくと、一同安堵のため息をついた。

友情よ永遠に

こうして長きにわたる世界名作劇場最大トーナメントは終了した。
閉会式では、ベスト4以上を表彰し、またアンネットは特別賞を受賞した。体重差が2倍以上のあるトムに全くひるまずに真正面から闘かったことが評価された。特別賞として1000ポンド、更にエキジビションマッチのファイトマネーとして200ポンドを受け取った。これで故郷に錦を飾る事ができると大喜びだった。

閉会式終了後、トーナメント参加者及び関係者も含めてパーティーが開かれた。
劇中ではカップルが成立することはあまりなかった世界名作劇場であったが、パーティーでは思った以上にカップルが多く見られた。

ベスはメグ、ジョー、エイミー、両親他、プラムフィールドの面々に囲まれていた。メグとエイミーは世界一周旅行の計画で盛り上がっていた。優勝賞金で回るので、彼女の意見を聞きたいのだが、ベスは体力と傷の回復のためなのだろうかずっと食べてばかりだ。

大まかな計画はメグとジョーに任せておけば良い。風光明媚な観光地も魅力的だが、一番の魅力は旅先の食事だ。まずは日本を観光したい。それと、まずは今いるTOKYOを散策したい。もっというと、山谷ドヤ街の卵かけご飯を食してみたい。色々なビジネスホテルに泊まって「ビジホ飯」も味わってみたい。

「ゑ?あんた、生卵なんて食べるの?」

エイミーが驚いた。わかってもらえなくて良い。生ものを受け付けられる人の方が少ないだろうから。

突如の会場のライトが消えたと思ったら、談笑しているアンネットにスポットライトが当てられた。続いてナンとジョーにもライトが当てられる。宴会場のステージにもライトが当てられ、壇上のカーテンがさっと開いた。ステージ上には特大のケーキが二つ。「アルプス物語わたしのアンネット」の40周年記念、「若草物語ナンとジョー先生」の30周年記念を祝うケーキだ。アンネットは40周年だけあってナンジョーのケーキよりも二周りほど大きい。

「アンネットさんにはさらなるサプライズがあります!」

壇上からはルシエン、父、弟のダニ―、おばあさん始め、作品の主要メンバーたちが現れた。

「ルシエン!ダニ―!」

アニタやアンジェレッタ、アルフレドらと一緒に楽しく過ごして来たけれど、最大トーナメント参加のため故郷を離れて一ヶ月。ルシエンの姿を見た時に、一気に寂しさと安堵感が押し寄せてきた。

壇上から下りてきたルシエンらと抱擁した。

「アンネット大活躍だったね!」

ルシエンのねぎらいの言葉に涙が一粒流れ落ちた。

「へへ…一回戦でトムに負けちゃったけどね。それよりも、ここに来るのに旅費がものすごくかかったんじゃないの?」

「いや、旅費は全部運営持ちなんだ。アンネット40周年のビッグサプライズってことで呼ばれて、一昨日こっちに来たんだよ。エキジビションマッチは見たよ!あの時はこっそり観戦していたんだ。総裁の配慮には感謝…」

言い終わる前にアンネットはルシエンを抱きしめていた。続いてダニ―、父、おばあさんも2人を抱きしめた。

「良かったわね…アンネット」

側にいたアニタ、アンジェレッタももらい泣きしていた。

『父、弟…家族がたくさん居るって良いわね』

自分には祖母であるイザベラ、育ての両親であるロッシ親方、エッダを…そしてアンゼルモを思い出した。

ベスはかねてから大好きな作品である「黒い兄弟」の面々に話しかけることができた。ダンテ、アントニオ、アウグスト、ロミオの順番で好きであることを本人たちに告げたら、おお喜びしていた。ダンテは嬉しさのあまり、またしても気を失ってしまった。

ドリンコート伯爵、セディ、ジェーンがイザベラ伯爵夫人と談笑していた。

「若君とジェーンさん、本当にお似合いですわね。ドリンコート伯爵」

「(セディとジェーンの交際はまだ認めていないのだが…)まあ、そうです…かなぁ。ジェーンは屋敷の次期メイド頭でして…」

「まあ!その若さでメイド頭の候補だなんて!大変優秀でいらっしゃいますわね。お美しい方でらっしゃいますし…才色兼備とはまさにこのことですわ!」

傍らに居たセディとジェーンはイザベラ伯爵夫人に挨拶をした。

『このお方が、若君を倒したアンジェレッタの祖母イザベラ伯爵夫人ね…氷の伯爵夫人だなんて呼ばれていたけど、ものすごく優しそうじゃない。私達のことを応援してくれているようだし』

公然と2人をカップルとしてあつかう。
孫娘であるアンジェレッタが、万が一セディになびいてはと心配したイザベラ伯爵夫人の狡猾な?配慮であった。アンジェレッタとアルフレドを呼び、ドリンコート伯爵に挨拶をさせた。セディはなんともないようだが、伯爵、ジェーンはアンジェレッタの美しさに言葉を失っていた。

『伯爵まで…まあ、アンジェレッタと初対面の人はほぼ同じような反応をするから仕方がないわね』

イザベラ様は自分の孫娘の美貌に、ごくごく稀に…本当に稀であるが嫉妬してしまうこともあった。

『間近で見るとこんなに眩しいだなんて…でも、さすが若君、なんとも感じていないようね…』

ジェーンはアルフレドを大変魅力的な男性だと思いつつも、アンジェレッタとアルフレドは名劇一気品のあるカップルだと褒めそやした。

パーティー参加者たちは作品の枠を超えて語り合い、笑い合い…大いに飲み、食べた。

パーティー終了の翌日、多くの選手たち及び関係者たちはそれぞれ帰国の途についた。

「じゃあね。アンネット。私達は先に帰るわ」

アニタは他の黒い兄弟らとともにスイスに帰国する。アンネットは、家族とあと5日間ほど滞在する。ルシエンらにとんぼ帰りさせてはあんまりなので、総裁の配慮で数日滞在することが可能になった。

「色々ありがとう。アニタ。あなたが居なかったら、こんなに楽しく過ごせなかったわ」

2人は抱き合い、アンネットもアニタも泣いていた。

「同じスイス人じゃないの。遠いけど会おうと思えば会えるわ。私もロシニエールに行くし、アンネットもソノーニョ村にいらっしゃいよ」

セーラ、ベッキー、ピーター、ラビニアたちは明日の便なので、ホテルのラウンジでゆっくりとブランチを摂っていた。そこへチェックアウトをしたベスがやってきた。セーラ達としばらく談笑した。

「世界一周旅行楽しんできてね」

「ええ。まずは日本をゆっくりと堪能するわ。まだ食べていないお料理はたくさんあるしね。あ~ビジホ飯が楽しみだわ!」

若草物語の面々は世界一周旅行だ。まずは東京、京都など外国人観光客が回る観光スポットからしらみ潰しにしていくのだろう。

チェックアウトでごった返すホテルのロビーは、トーナメント戦が終わったとは思えないほど和やかな雰囲気に包まれていた。

終わり。

動画を見なさい。

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