世界名作劇場最大トーナメント開始3日前に、ロミオとビアンカは会場入りしていた。今は、ビアンカと一緒に会場の敷地内を散歩していた。
一回戦の相手の聖少女コゼットについては、全く知らない。自分とは比較にならないほど、貧乏な目に遭ってきた苦労人だそうだ。
「やあ!ロミオ!」
アルフレド、アントニオ、ダンテ始め、黒い兄弟のメンバー数人がやってきた。ロミオの応援と、調整相手になろうと思って来たのだ。
「ロミオ!半年ぶりじゃないか!随分たくましくなったなぁ!」
親友のアルフレドが、嬉しそうにロミオを抱きしめた。
他の仲間たちとも、それぞれ再会を祝して抱き合った。
黒い兄弟のメンバーでトレーニングに励んでいたが、半年前、ロミオは修行のためにルガーノを離れ、ソノーニョ村へ一度戻ると言って黒い兄弟のもとから去っていった。
「どうだ?ロミオ、修行の成果は?」
アントニオが、どれほど強くなったのか?何ならいっちょ俺が揉んでやるぜと、言わんばかりに話しかけた。
「ああ、まあまあかな。前よりかは強くなった気がするよ」
腕も、足も、首も、半年前よりもたくましくなっている。顔つきも少々険しくなっているようだが、それは厳しい修行のためだろう。久々にあった親友の姿を見て、アルフレドは満足していた。
「久しぶりに、あれをやろうぜ、アルフレド!」
アウグストが、アルフレドに促した。
「ふふ…そうだな」
アルフレドたちは、胸に手を当てて誓いのポーズを取った。
「皆で力を合わせてどんな困難も打ち破ろう!勇気を分け合おう!みんな!僕たちの英雄ロミオを…」
パチパチパチパチ…。
アルフレドがロミオの応援、そして、誓いの言葉を述べようとしている中、ロミオが突然拍手を始めた。もうやめろと言わんばかりだ。
拍手をやめた後、ロミオはすぐにビアンカの腰に手を回した。
「ありがとう…アルフレド、それにみんな。だけど…今回のトーナメントはそんな雰囲気で戦うものじゃないんだ。狼団との喧嘩じゃあるまいし」
「ロミオ…僕だって先日、ビアンカ、アニタ、アンジェレッタと『ロミオ争奪戦』を戦ったから、どんな戦いかはよくわかっているさ」
「ちぇっ!水臭えな、ロミオ。スパーの相手なら、俺様がやってやるぜ!」
ダンテが名乗りを上げた。久々の再会、どれだけロミオが強くなったのか知りたいのだろう。
「いや、良いんだ。ダンテ。そういうのは良いんだ。僕は…身につけたかった。超実践的な技術を!戦いに勝つための強さだけを求めてきたんだ。生半可な技術では、この戦いは勝ち抜けない。だから、ある人達の胸を借りてトレーニングしたんだ」
「狼団、ジョバンニたちか?」
意外だと言わんばかりに、アウグストがたずねた。
すでに狼団とは和解し、同盟を結んでいるどころか、仲間のような間柄だ。喧嘩上等の彼らの胸を借りるのは、別におかしいことではない。
「うん、そんなとこかな。皆にも紹介するよ。僕の新しい仲間たちだ。いや、師匠と言っても良いくらいの強さだよ。この人たちは」
いつの間にか、ロミオの背後に5人の深々とフード付きローブを羽織った男たちが姿を現した。
ロミオに抱かれているビアンカは震え、表情も引きつっている。
『ロミオ争奪戦で勝利したビアンカが、こんなに怯えるなんて…一体?』
「君はまだ、この人たちに慣れていなかったものね。さあ、仔猫ちゃんはお兄ちゃんといっしょにいなさい」
ロミオは優しく腕をほどき、ビアンカをアルフレドの元へやった。
『仔猫ちゃんだと…!?なんだ?その…彼女以上恋人未満のような呼び方は…?』
ロミオは変わってしまったのだろうか?ビアンカはロミオにぞっこんのようだが…。
「おい…ロミオ…仔猫ちゃんってどういう…」
ロミオは先程よりも大きな声で遮った。
「君がアンジェレッタの回りをチョロチョロしているのは知っている。でも、そんなことはどうでもいいんだ。ずいぶん昔の話だからね。もう一度言う。僕は、実践的な格闘術を身につけたかった!馴れ合いのスパーリングの繰り返しでは、強く慣れないってことがわかったんだ!!」
黒い兄弟一同は、この時ようやくわかりかけてきていた。半年前のロミオとは明らかに違うと。
そして、自分たちが戦力外通告を受けたことに対してショックを隠しきれなかった。
「フードを取ってくれよ。アルフレドたちに顔を見せてあげてくれ」
ロミオが声をかけると、男たちはフードを外した。
「ま、まさか…あ、あんたたちは…!!!!!」
アルフレドは絶句した。
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