『セーラ如きに…救われたなんてっ…!』
自分がいち早くマダルトを唱えていれば、全滅することはなかった。
おまけに、セーラに命を救われた始末。ロイヤルスイートルームで、ラビニアは一人、自分の不甲斐なさに呆れ、憤っていた。
『アウグスト…』
アウグストを失った悲しみを紛らわすには、迷宮で切った張ったの戦いをする以外に手段はなかった。
部屋の鍵をかけ、ガートルードたちがいる「馬小屋」へ向かった。
「行くわよ!ガートルード、ジェシー!」
「じゃあ、パウリーノとダンテも呼んでこないとね」
傍らにいるミカエルに視線を向けたガートルードが答えた。
「必要ないわ」
「ゑ?」
「経験値を6等分していたら、なかなか強くなれないでしょ?私達3人で行くのよ」
ジェシーは腰を上げると、ミカエルを見てニタニタ笑っている。
「ぎししし…あんたも来るのよっ!」
「ぼ、僕っ?君達3人で行くんだろぉ?」
「いいから!あんたは『キャンプ』のときに役に勃ってもらうんだから!ひへへへ…来いっ!」
ジェシーは強引にミカエルの腕をひっぱり立たせた。
「ちょっと!ミカエルは、カティノ(眠り呪文)、モンティノ(呪文封じ)要員なんだから!戦闘中でもちゃんと役に立つんだから!そんな言い方やめてよ!」
ガートルードがジェシーの粗暴な振る舞いに抗議した。
「そうねえ…確かにミカエルに来て貰った方が助かるかも。アイテムの鑑定もしてくれるし、お金も効率的に稼げるし。決まりね。あんたも来なさい」
ラビニアの命令により、4人は地下10階を目指した。
地下10階へ
脅し文句が書かれた看板を流し読みし、ジェシーは不敵な笑いを浮かべた。
「こんなのでビビるわけないのにねえ。ひひひ」
「今日は小手調べ。あくまでも偵察よ。早まったことはしないようにね」
隊長のラビニアが、全員を戒めた。特にジェシーに対して。
まず、第一の玄室。
ミカエル「レイバーロード!」
ジェシー「ひひ…それに、ハイプリーストが一人、ファイアージャイアントが2体ね」
『速攻で仕留める!』
ラビニアはすぐにティルトウェイトの詠唱をはじめた。
レイバーロードはマダルトを唱えてくる。ハイプリーストは瀕死に追い込むマバディや即死系のバディなど、高レベルの僧侶呪文を唱えてくる。
ミカエルはハイプリーストへモンティノ。
ガートルードはレイバーロードにモンティノ。
「ティルトウェイト!!」
ジェシーの方が早かった。レイバーロード以下、全滅。
『私より…放つのが早かったっ…!』
悔しそうな表情を浮かべたラビニアだが、レイバーロードと対峙したのは初めてだったので安堵の気持ちの方が強かった。
マスター忍者の集団。
レベル10メイジの集団。
ゴーゴン、キメラの集団。
レベル8ファイターの群れ。
マリクトやティルトウェイトで吹き飛ばし、地下10階でほとんど無傷のままワードナの玄室へと近づいていた。
ウィルオーウィスプで経験値ガッツリ。
武器
「へへへ…進軍♪進軍♪」
ガートルードもラビニアも余裕綽々だ。
「ねえ…深入りし過ぎだよぉ…今日は小手調べって言ったじゃないか」
「うるさいわね。あともう一部屋二部屋遊んだら帰るから」
ミカエルはラビニアに意見したが、当然一蹴された。ミカエル如きが私に意見するんじゃないと言わんばかりだ。
玄室の扉を開けると…。
「わっ!ごちそうじゃない!」
ジェシーが舌舐めずりしながら、詠唱をはじめた。
フロスト・ジャイアント。経験値が40000を超える巨人だが、マカニト一撃で塵にかえってくれるありがたいボーナスキャラだ。
「取り巻きの盗賊たちは、眠らせて。適当に処理しましょう」
完全勝利。
「宝箱の罠は毒針」
罠を見抜くカルフォを唱えたガートルードがつぶやいた。
「あんた、開けなさいよ。ミカエル。ひひひ」
ジェシーがミカエルに言うと、毒針が発動する音が聞こえた。
「うっ!」
ガートルードが開封した。毒針がガートルードの右肩に刺さった。
「ごめんよ…僕、まだラツモフィス(解毒の呪文)を覚えていなくて…」
ガートルードは自身にラツモフィスをかけて解毒した。
「あらあら、随分見せつけてくれるわね。ガートルード…ひひひ」
「良いから。宝箱の中身はなんなのよ」
ラビニアはジェシーの冷やかしを無視し、ミカエルに聞いた。
真っ二つの剣でも、カシナートの剣でもない。ひと目見ただけでは全くわからない代物。アイテムの知識は脳内に植え付けてあるのだが、やはり現物を手に取りながらでないと、その知識は表に出てこない。西洋風の剣ではない。若干禍々しい気を放っている武器…。悪のサーベル…でもない。
もしや…これは!?
「む、むらまさだぁ!」
ミカエルは、思わず大きな声をあげてしまった。
「む、村正ですって!?」
噂でしか聞いたことがない、伝説の妖刀。サムライ専用武器で、「レベル3サムライ」が村正を振り回しただけで、キメラ程の魔物ですら両断してしまうという…。
ワードナさん
玄室を抜け、回廊を抜けるとそこにはっ…!
来ちゃった…。
もう後戻りはできない。
しかしですね…。戦っても勝てる見込みはなさそうだし、ひと当てしてみて駄目だったら、マロールで地下1階に逃げるか、ことと次第によってはリセットと思っていたので、画像を撮らなかったんですよ。
ワードナ、バンパイアロード、バンパイアが1体と恵まれた引きです。これならいけるか…?
「無理だよぉ!」
「うるさい!あんたはワードナにモンティノを唱えればいいのよ!」
き、効いてる!
ナイス!ミカエル!
ラビニアがヴァンパイアロードにジルワンを。ジルワンはアンデットを完全に破壊する呪文です。呪文無効化能力を持っていないバンパイアロードには、極めつけの呪文。ジェシーのティルトウェイトにより、バンパイアが消し炭に。
モンティノで呪文を封じているとは言え、数ターンで効果が切れてしまうことがあります。
次のターンでの戦略。
僧侶ガートルードによるバディ(即死魔法)。
ラビニア、ジェシーらのラカニト(即死魔法)。
そして、もし、これらの呪文が全く効かずMPが切れてしまった場合の白兵戦に備え、ミカエルがディルトなどの呪文でワードナのACを上げる。
「ラカニトじゃ無理ね…」
ジェシー、ラビニアの連続ラカニトにもびくともしない。
ワードナは呪文が唱えられないにも関わらず、ジルワンを唱えている。
「ひひひ…バカね。発動したところで、生身の私達に効くわけがないのに。大魔法使いのくせに、知恵が10未満かもしれないわねぇw」
が、笑ってばかりはいられない。
「ガートルード!?」
ミカエルが叫んだのは、バディを唱えるはずの彼女が、ワードナに向かって一直線に突撃したからだ。
「白兵戦はまだ早いわよ!ガートルード!」
リーダーのラビニアの制止も一切聞かない。
「密着したぁ!!!」
ワードナの懐に飛び込み、右の掌をワードナのみぞおちに当てた。
忍者の当て身ならともかく、僧侶の当て身など効くわけがない。ワードナのACは低いのだ。熟練の忍者ですら素手でダメージを与えられないこともある。
「バディ!」
ワードナは膝から崩れ落ち、消失した…。
圧勝!
まさか勝てるとは思いませんでした。画像撮っとけばよかったなぁ^^;
野良エンカウント、戦闘中にマロールを唱えて地下1階へ。
テレポート先が、城下町への階段っ…!!!!
勢いでAボタンを押し…。
エンディングに…。
いや、もうちょっとワードナ退治で遊びたかったのに…。
彼女たちがワードナに会うことはないけれど、ワードナ退治の勲章ももらって箔が付いたかな。
コメント