レミ&マチアの初ライブは、どこかの村で行われた結婚式。
ふらふらになるまで演奏した結果、28フランの大金を稼ぐことができました。
12,3歳でこの演奏力、このカリスマ。現在の渋谷で流しをやれば、音楽事務所のスカウトが砂糖に群がるアリンコのように押し寄せるはず。

当面の目標は、
1.バルブラン母さんにプレゼントする雌牛を購入するために150フランを貯める。
2.アキャン一家の長男アレクシに会いに行く
3.バルブラン母さんに会いに行く
モンタルジからヴァルスまでの道のりは長い。興行しお金を稼ぎながら行かなければなりませんので直行はできません。寄り道しながら進むこと1000km!
その甲斐あってか、すでに128フランを稼いでおり、あと22フランで雌牛が購入できます。ここまで稼げたのはマチアがいてくれたおかげです。先日購入したコルネットでの演奏は多くの人を魅了したようです。
黒き町 ヴァルス――
- つい100年前ほどは山間の寒村に過ぎなかった。
- 1750年頃、老貴族がヴァルスに炭田採掘を開始。地下150mを掘っても鉱脈が見つからず、それでも周囲の者たちはみんな彼を馬鹿にしていたが、全財産を突っ込み気狂いじみた投資を続行。ついに石炭の鉱脈を発見。
- 現在は、寒村から人口12000人の都市へと発展。南フランスの三大工業都市となる。
- ヴァルスは荒原で不毛の地。木が生えておらず、短い草が生い茂っているのみ。二本の渓流が合わさるディボンヌ川は雨が降ると一気に増水し氾濫してしまう。裸の山なので大雨が降ると土砂崩れが起きやすい。
- 貨車が行ったり来たりしている、煤煙にまみれた煤けた町。
「引き返せ!」(私の声)
禿山、雨が降ればあっさり氾濫する川。そして、炭鉱。
皆さん、もうこの後の展開はおわかりですね?主人公が炭鉱のそばに来て、一歩も入らずに済むわけがありません。
大変まずい状況です。もうすでに、ヴァルスという町の名前からしてまずいですけどね。
レミとマチアはヴァルス近郊までやってきました。
すると髪を振り乱し、小さな子供の手を引いた錯乱状態の女性が登場。

「涼しい道はどこにあるの?私がその道を聞くのはそこへ行けば必ずマリユスに会えるから…あんたマリユスを知っているんだろ?マリユスは炭鉱が爆発した時にその涼しい道へ逃げ込んだ。私はもうあの人と半年も遭っていない。みんな炭鉱で死んだんだ!あんたには渡さないよ、この可愛いピエールは!」
子供を抱き上げ陽気な口笛を吹いて去っていきました。
カムイ伝とかによく出てくるタイプのキャラ…。
いきなり気が滅入ります。
それでもなんとかアレクシが住む家を探し出し、ついに再会することができました。
アレクシはおじのガスパールのもとで鉱夫として働いています。ガスパールと聞くとアニメの家なき子レミで、マチアたちを虐待し労働させていた悪漢でしたが、原作ではアキャンさんの弟です。アキャンさんと同じで陽気で人が良くアニメのガスパールとは全く違います。
アレクシと再会を果たしたレミはひっきりなしにおしゃべり。鉱山で強制労働、激務が嫌になっているかと思いきや、アレクシは自分の鉱山が大好きになっており悲壮感ゼロ、むしろ活き活きとしております。ガスパールおじさんがいい人で良かった。
鉱山は危険ではあるがロマンがあるのでしょう。レミも炭鉱の中にぜひ降りてみたい。アレクシの話を聞いて矢も盾もたまらないほど好奇心をそそられました。
爆発事故が何度か起こっても鉱夫たちの足は止まらない。それなりの給与もモチベーションになっているのでしょうが、何より男心をくすぐるものがあるのでしょう。
とはいえ、レミは、炭鉱については聞いた話以外は何も知らないままヴァルスを去るのだろうと思っていました。この時はまだ。
たまたま起こった出来事が原因で、炭鉱夫が時としてさらされる危険と恐ろしさ、おぞましさをとことんまで思い知らされることになるのです。
あと一日ヴァルスを去るのが遅かった
さあ!明日はヴァルスを出発だ!
出発の前日、アレクシが怪我をしてしまいました。指を潰してしまったのです。なんとまあ…おあつらえ向きな…。普段怒らないガスパールおじさんもこれには激怒。
アレクシが怪我をしたら、誰がトロッコを押すんだ!人手が足りないんだぞ、人手がぁ~!と、こんな勢いです。
レミが名乗りを上げました。
兄弟同然のアレクシと親切にしてくれたアキャンさんの弟のためにも、一肌脱ぐしかないと思ったのです。
多くの読者が思ったはずです。炭鉱に入ったら閉じ込められると…。
レミがアレクシの代わりに働いている間、マチアは外でカピを連れて興行をすることになりました。マチアは変わりました。ガロフォリ親方のヤサで暮らしていた、弱々しかった頃とは全く違います。生気に満ち、常に上機嫌で陽気、何事にも良い面を見、なんでも面白がり、ちょっとしたことで喜び、災いすら福に転じてしまう。レミにとって無くてはならない存在です。イタリア人らしい明るさと屈託の無さ、愛嬌、困難にぶつかっても腹を立てたり逆らったりしないで切り抜ける順応性。
最高です。
読んでいるとマチアがどんどん好きになっていきます。
いざ、炭鉱へ。
地下での仕事は大変そのものでした。1日12時間肉体を酷使することはもちろん、暗闇の中で寡黙に仕事をすること、気晴らしもできない。食事も外でなく現場で食べる。
お天道様の下で旅慣れたレミにとっては辛い仕事では有りましたが、旅によって鍛えられた肉体と精神は、炭鉱の過酷な環境にも徐々に慣れていきました。
マジステールとの出会い
レミにとって貴重な出会いもありました。
一緒に働いている運搬夫の60歳のおじいさんです。若い頃は木積工として坑道に木枠をつくったりする大工でした。しかし、落盤事故で指を3本失い仕事を辞めしばらくは年金暮らしでしたが、年金を支給していた会社が倒産したため、再び働き始めました。
彼はマジステール(先生)と呼ばれていました。とても物知りで、レミに石炭がどうやってできたのかを教えてくれたり、自宅にも招いて地殻変動や炭層がどうできたかも教えてくれました。
現場では変わったじいさん、話し相手が欲しい寂しい爺さんと思われていましたが、非常に勉強熱心で知識が豊富な方でした。若い頃は好奇心旺盛で、偉い学者を鉱山に案内して耳学問ですが、多くのことを学びました。本を読み独学で知識を叩き込む向学心に溢れた若者だったのです。
ガスパールおじさんは、休日、レミがマジステールの自宅を訪問しようとした際「マジステールは話し相手がほしいんだな」と冷やかしていました。
しかし、ガスパールの兄アキャンであれば、マジステールとも気があったかもしれません。アキャンも勉強熱心で、独学で植物について学んでいましたし、鉱山と植物は直接関係なさそうでも、石炭というのは植物が腐り次々と重なっていき生成されたものです。ガスパールにアキャンほどの向学心があれば、もっと仲良く慣れていたかも。

レミはマジステールから今で言う地学のようなことを教えてもらい、彼の家には炭鉱地帯にある化石植物の標本も見せてもらいました。
変わり者の爺さんですが、レミの手にかかればあっという間に籠絡です。8歳の頃から世間に揉まれ、フランス中を歩いてきたのでコミュニケーション能力のおばけです。そのうえ、好奇心旺盛で聞き上手で相槌上手。13,14歳くらいの男の子相手でも、レミのような子供だったら話していて楽しくてしようがないでしょう。
炭鉱に何でも知っている物知りベテラン爺さん。
何かがあった時に必ず頼りにできる。坑道を知り尽くした大ベテラン。ラピュタのポム爺さんばりに頼れるはずです。


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